imterlawの日記

郊外にぽつんと立った豪華な屋敷

【感想】Red Dead Redemption 2  ゲームと狂気と面白さ

RDR2をクリアした。
恐ろしいほどに優れた、2018年のなかで一番面白い比類なきゲームでありつつも、

現代のゲームとは思えないお粗末な操作性でもある、そんなゲームだった。

このゲームはプレイヤーを楽しませる気は一ミリもない。

狂気に取り付かれたゲーム製作者が、「19世紀末アメリカをゲームの中で再現する」こと、「フロンティア時代の終わり、西部開拓の残滓を求める時代に取り残されたギャングが『終わる』物語を描くこと」それだけに注力したゲームだ。

 

1.「終わりへの物語」

RDR2は前作の前日譚を描いた物語だ。前作RDRは1910年代を舞台に、連邦捜査官に家族を人質に取られた元ギャング、ジョンマーストンが家族を取り戻すためかつて自分の所属していたギャングの仲間を殺しに行く、贖罪リデンプションの物語だった。


今作では遡ること15年前、そのギャングがまだ活躍していた時代を舞台とし、

時代との軋轢から崩壊したギャングの顛末を描く物語だ。

 

(時系列では前日譚だが制作されたのは2の方が後だから当然だが)、1で名前が一切出てこない過去のキャラクター、アーサーモーガンという男が主人公になっており、ギャングが崩壊することはすでに確定された事実となると、この主人公が最後に迎える結末は、始まる前から察しがつく。

1899年、アメリカ。開拓時代が終わり、法執行官は無法者のギャングを一掃し始めた。 西部の町ブラックウォーターで大掛かりな強盗に失敗した後、アーサー・モーガンとダッチギャングは逃亡を余儀なくされる。連邦捜査官と国中の賞金稼ぎに追われる中、ギャングたちが生き延びるためにはアメリカの荒れた土地で強奪、暴力、盗みを働くしかなかった。抗争に関わるほど、ギャングはバラバラにされる危機に見舞われる。アーサーは、自らの理想と自分を育ててくれたギャングへの忠誠、そのどちらかの選択を迫られる。

公式ページより引用

 

このゲームではプレイヤーは「アーサーモーガン」となり、世紀末アメリカを舞台とした広い世界を旅することとなる。

銀行強盗、民家への押入り、列車強盗、荷馬車への押入り、馬泥棒、羊泥棒、殺人強盗なにをしても良い。もちろん強盗を行えば法執行官に追われる身となり、賞金稼ぎにも狙われることがあるが。

このゲームは自由だ。荒野、雪の降る高山、近代化の進む工業都市、ワニが潜む沼地、様々なロケーションが用意されており、住人との交流(強盗含め)、生き物(釣りと狩猟ができる)、別のギャングとの戦闘、カジノでのギャンブル、ガンマンとの決闘などのイベントを楽しめる。

意味不明な分量が用意された本筋から外れた作り込みに加え、本筋では主人公であるアーサーモーガン贖罪リデンプションが描かれる。


2.操作性の悪さ

このゲームは操作性がとにかく悪い。というより2018年のゲームが当然満たすべきUIの水準を一切無視している。

例えば、このゲームで馬に乗るのは馬の近くで三角ボタンなのだが、三角ボタンには人を脅す際にも用いられるため、人ごみの中で馬に騎乗しようとした際に運が悪いとそのまま馬に乗れずに横の人間の首を締め出す時がある。もちろん警察に指名手配され、射殺される。
キーの配置が到底理解できないものになっており、とにかく利便性が悪い。視野移動の反転もコンフィグにはないし、人に話しかけるボタンと銃を構えるボタンが時たま入れ替わる。

オープンワールドなのにファストトラベルが拠点からの片道制度もしくは、町々を結武鉄道、駅馬車頼りなのもすごい。確かにこのゲームは馬に乗って移動する中で発生するイベント、不意の野生生物からの襲撃、郊外に潜むギャングとの偶発的な戦闘、と移動そのものがかなり楽しさに満ちているものの、「ファストトラベルを意図的に不自由にする」というのはかなり思い切った手法だろう。なかなかできることではない。

 

3.ストーリーテリングの妙

このゲームは人が死ぬ。先ほどまで一緒にいた仲間が、軽いイベントの中で死んでいく。過度に演出残ったイベントはない、「ギャング」という生き様の末路を、ボロ雑巾のように死んでいく仲間たちの死が雄弁に語る。

 

このゲームでもっとも面白いのはギャングのリーダー「ダッチ」という存在だ。

ギャングと義賊の差異、そして「義賊」としての生き方を雄弁に語る、癖のあるギャングをまとめるカリスマ、アーサーは幼い頃にこのダッチに拾われギャングに入った過去がある、大恩ある「師」であると言える。

 

「時代の軋轢に翻弄され、崩壊していくギャング」の顛末を追う物語の中で、 

無関係の市民を殺さないことや、不必要な殺しを避けるといった「義賊」として踏み入れてはならない一線を、ダッチはどんどん越えるようになる。

仲間のことを思っての行動だと皆に説明した次のシーンでは、敵の挑発に乗り仲間を危険に晒す。

「計画がある」と皆に語るその口は雄弁だが、実際には行き当たりばったり。

銀行強盗や泥棒をしても、かつてはいくらでも逃げることができた。近代化により整備され始める軍隊、電話をはじめとする連絡網の発達が、それを許さない。

 

ゲームが進むにつれ、アーサーは義賊としての建前を捨て、ただの犯罪者と成り下がろうとするダッチの行動を疑い、彼が「狂ったのではないか」という疑念を持つ。

 

面白いことに、彼は本当に狂ったのか、それとも昔から残忍な性格にもかかわらずその本性を隠していただけなのか、その真実は物語の最後まで語られることはない。その曖昧性がいい。

物語のキャラであるということを極力見せないように、キャラ設定がなされている。

「安易な語りやイベントを排する」選択をとれることに、極めて優れたライターのさじ加減を感じる。

 

 

4.狂気的なまでの作り込み

このゲームは作り込みが狂っている。

ゲーム中に登場する「新聞」に実際の記事を全てのせたグラフィックをわざわざ用意するバカ、

回復アイテムや銃弾の商品リストが載っている「カタログ」の全てのページに実際に1800年代のカタログを模して全てのカタログのページを用意する狂人、

ゲーム中にできるミニゲームのポーカーのために誰も読まない5ページ分くらいスクロールできる説明を用意するアホ、

「銃のリアル感」を重視するためにプレイヤーの快適さを犠牲にして、ライフルを打つたびにレバーアクションを挟む動作をわざわざ 追加する変態、

大陸横断鉄道や南北戦争といった舞台背景に対して、一切説明を入れずにセリフやドキュメントでバシバシ舞台背景を加味した文章を書く自己中、

このゲームをプレイしていて、制作者の狂気的な情熱を感じなかった瞬間が一度もない。間違いなく狂人の集団が作ってる。隅から隅まで完成された世紀末アメリカの舞台背景の中でストーリーを描く贅沢さ、途方もない時間と金をかけて完成された趣味の世界、狂っているとしか言いようがない。最高。


5. まとめ

「圧倒的な物量と作り込み」、「その上に描かれる最高のストーリー 」の二つが重なって生まれた至高のゲーム。惜しくも今年のGOTY受賞とはならなかったが、今年やったゲームの中では最高のゲームだと言っていい。

アーサーモーガンという男の生き様、そして贖罪リデンプションをプレイする価値は極めて高い。