imterlawの日記

郊外にぽつんと立った豪華な屋敷

【ネタバレ 感想】イース8

1.はじめに

イース8をクリアした。

初めてのイースシリーズだが、各作品が独立してることから8からやっても十分に楽しめた。

稀代の冒険家アドルクリスティンの残した冒険記を後世の読者が追体験するという舞台背景をゲームのフレーバーとしてだけではなく、

作品ごとに別の冒険記を使い独立した物語にすることで長編シリーズに対する途中参画の障壁を省くというのは非常に上手い設定だと思う。

グラフィック、システムに若干古くささは感じるものの、ハイテンポな戦闘が面白くて、ストレスなく遊べた。いいゲームだった。

ただ、このゲームの最後、ダブル主人公の一人の「ダーナ」と、

彼女によって導かれる結末がもやもやしたものだったためそれを整理したい。

 

2.ストーリー

 

このゲームは徹頭徹尾ダーナの自己犠牲でできている。

エタニア王国の大樹の巫女として、最後までエタニア王国をラクリモサによる滅びから救おうと奮闘しする。そして最期それが叶わないとわかると今度は自らの身を封印し、遥か未来のアドルたちの時代、「次のラクリモサ」を救おうとするのが彼女の目的となる。

最終的に現代でアドルと共にラクリモサに抗い、ラクリモサを司るシステムを破壊することで彼女の目的は完遂するものの、システムを壊すことで世界そのものの基盤が崩れてしまう。

最後、世界滅亡の危機に際してダーナは自分自身を神に差し出すことで、世界の滅亡を防ぐ。が、人として生きることはできず、自分自身がラクリモサを司る神となって終わり。

主人公であるはずのアドルは結局この物語では傍観者、語り部としての役割でしかない。

実際に世界を救うのはもう一人の主人公であるダーナだ。アドルたちは世界を救うために冒険しているようで結局「世界を救ってもらった」にすぎない。

3.エンディングの後味の悪さ

物語の中盤で、未来を見える予知の力でアドルたちとの別れを予期したダーナが、どうせ別れるなら辛くないうちに、と仲間から離れるシーン、

結局「別れは避けられなくても、自分の言葉で別れを告げるんだ」というところに落ち着き仲間に再び合流する。

 

結局エンディングはここの伏線を回収するように動く。

逃れられない別れの時をどう満足して過ごせるか、新エンディングではそれを達成するためにラスボス戦後にエピローグが分岐する。


神になったダーナを見得るようにするため、追加ボスである始まりの木を倒し、

最後にダーナにお別れを言って終わりというのが、真エンディング。

結局このエンディングの後味が悪いのは、

ダーナが客観的に見て何一つ救われていない」点だ。
最後にお別れを入れるというその一手のだけの違いで、結局ダーナの自己犠牲は何一つ変わらない、ダーナが犠牲にならずに済む世界はない。

このゲームのモヤモヤ感のすべてはダーナの救われなさに執着する。

もちろん、ここでダーナが死なずに済むご都合エンディングが合わないのはわかる。
エンディングがあるからこそ、最初のアドルの独白(ゲーテ海案内記序文)の文章に

趣が出るというのはその通りで、同意する。クリア後に戻ってくるタイトル画面もいい、そこまでは100%同意できるし、このゲームの素晴らしいところだと言っていい。

 

ただダーナを犠牲にした世界で、主人公たちの心残りを消すために追加イベントでダーナの最後の願いを叶えてあげるというのが欺瞞にしか観えない。

プレイヤーに用意された「生ぬるい救済」をもって真エンディングとするのが個人的に納得いかないと感じる。

 

むしろ、アドル以外のすべてがダーナの存在を忘れ、ダーナの喪失というものを痛々しいほどに感じるバッドエンドの方が、ダーナの犠牲を礎とし救われた世界に生きる人々、そしてこのゲームを最後までプレイして結末に到達したプレイヤー(私)にとってはあるべきエンディングだと私は考える。

 

4.まとめ

過去に親を亡くしたトラウマから、「この手がとどくもの全てを助けたい」という強い意志を持つようになった彼女だが、結局彼女の手がとどくところに世界そのものがあったから一切の躊躇なく世界を救いに行ってしまった。

結局「ダーナは周りを救うことしか見えておらず、その救いの中に彼女はいない」というダーナの友人であるオルガの独白が、何も解決することなく終わる。

世界と自分どちらを救うかという一種の「ありきたり」のストーリー、普通ならここでの葛藤が物語を動かすはずなのにこのゲームは違う。

ダーナは世界と自分を天秤にかけて一切の躊躇なく自分の身を差し出す。本来は感動すべきシーンなのに、行動原理が理解できないため言い方は悪いが「たなぼたで世界を救ってもらった」ようにすら感じた。「畏敬の念」を覚えるというより理解ができない。

 

だからこそ、ダーナの自己満足を救いとして何の憂いもなく島を離れる真エンディングに極めて強い違和感を覚えるのだと改めて感じた。

 

総合的に見るとゲームは良かったのでイース9も楽しみ。