【ダブル】ガルーラスタン
第18回アリーナオフで使用、予選4-2で直接対決の結果グループ1位で決勝トーナメントに進出。決勝トーナメント1落ち。
レートで回して1900くらい。
ガルーラスタンを使うに当たってガルーラミラーに対する解答を持ちたいと考えていた。猫捨て身けた繰り不意打ちのガルーラ同士が初手でかちあった場合、横の並びにも依存するが基本的にガルーラ同士でけた繰りを打ち合うことになるだろう。
この初手でガルーラがガルーラに致命傷を与える駒に終わってしまうのが気に食わなかった。ガルーラを消耗させずにガルーラを処理する手段として、今回は鬼火ゲンガーとゴツメランドを採用。けた繰りを打たれる前に上から鬼火を打つ、ガルーラの裏からランドロスを展開するという二つの筋でガルーラがガルーラで疲弊することを防ぐ。ここでガルーラがガルーラにけた繰りを打つ必要がなくなったので、けた繰りではなく最も強いと信じるグロパンを採用することにした。
【個別解説】
陽気as
おんがえし ふいうち グロウパンチ まもる
猫捨て身ではなくグロパン型で採用。猫捨て身ガルーラは裏からランドロスのような威嚇を投げられるだけで腐ってしまうことが多く、なるべく腐らないガルーラこそが強いガルーラであると信じてのグロパンガルーラ。グロパンガルーラは積んだ後に盤面にいかに居座るかが大事であり、守るを採用。猫守両立も考えたが、グロパン積んだ後に上から縛られて動けないのは弱いと考え、不意打ちを採用。
ゲンガー(ふゆう)@きあいのタスキ
臆病cs
ヘドロ爆弾 挑発 鬼火 守
多発するガルーラミラーへの回答の一つ。ガルーラミラーはガルーラ使いの永遠の悩みだが、それを上からの鬼火で(当てれば)解決できる。ヘドロ爆弾、シャドーボール、凍える風、挑発、鬼火、守、どれもほしい技であり、本当は全部入れたい。ゲンガーは「鬼火の命中不安」「技のスペース不足」のせいでカタログスペックは高いけど自分で使ってみると案外弱い。
凍える風はランドロスやガブリアスが出てくる瞬間に打てると一番強いと思うが、打てる場面が少なかった。
ガルーラに打つ鬼火、モロバレル、スイクン、サンダー、トリル役などに打つ挑発、ニンフィアに打つヘドロ爆弾をこの構築では採用した。相手のs操作に切り返せる技が少ない構築のため、挑発が生命線になる。ガルーラを前に肝っ玉猫だましを防ぎたいことが多く守は切れなかった。
陽気 189-168-122-x-103-147
地震 馬鹿力 岩石封じ 守
ファイアロ―の鉢巻ブレバを威嚇込みで2耐え。メガガルーラの177冷凍パンチを威嚇込みで最高乱数切って耐え。とにかく固い。対ガルーラミラーの駒その2。このポケモンでガルーラと1:1交換をして、こちらのガルーラのグロパンを通すというのが基本となる。冷凍パンチを威嚇込みで耐えれるので、ゴツメ反動と馬鹿力でタイマンならばガルーラを絶対に道連れにする。
ランドロスというポケモンは火力が低い(岩雪崩)、無効になりやすい(地震)、連発できない(はたきおとす 馬鹿力)技がメイン技に入ってくるため、腐りやすさを助長するようなスカーフという持ち物を持たせるのは相性がよくない、と感じていた。
岩技を岩石封じにしているのは威嚇鬼火などで打点として腐ったり、地震が打てなくなった時でも相手に対して干渉できる技が欲しいと考えたからである。叩き落とすも有用ではあるが、岩技がないとファイアロ―、リザードンで困るのでこの枠は岩石封じがいいだろう。
この型のランドロスはリィズさんから教えてもらった型(リィズのポケモン雑記 ダブル構築紹介:ガルーラスタン)で、教えてもらった当初は岩石封じがストーンエッジになっていた。レートに潜っていく中で岩石封じの方が強いと感じて変更し、岩石封じの強さをリィズさんにドヤ顔で教えてあげたら「ああ、俺もそう思って変えたよ」といわれてしまい、自慢できなかった。百戦使ってやっと気づいた俺が馬鹿みたいだった。
サザンドラ(ふゆう)@スカーフ
控え目cs
流星 竜波動 悪波動 大地
メガボーマンダ、ゲッコウガ、ゲンガーなどのガルーラより速いポケモンへの解答。
アリーナオフ決勝トーナメント一回戦で陽気スカーフランドロスの岩雪崩で怯んで負けた戦犯でもある。「ランドロスに絶対に抜かれてはならない」構築においてはスカーフサザンは臆病で採用すべきであると考えているが、臆病の火力では竜波動でメガマンダを倒す動きができなくなってしまう(控え目でも高乱数だが)。陽気ランドの雪崩で怯むリスクを知ってなお控え目で採用した(しなければならなかった)のでこの負けは構築の負け。
ボルトロス(いたずら心)@命の球
臆病cs
10万 草結び 電磁波 守
苦手なテラキオンを上から草結びで即処理できる、電磁波でグロウパンチの起点を作ったり、ガルーラが苦手なバシャーモ、雨パの動きを止める、この点が強い。ボルトロスは上から麻痺を入れられるジャローダ。めざパ氷は単体性能を下げる技なので採用しない。対ガブリアスはサザンドラ、ランドロスで何とかできる。スカーフランドロスもこちらのランドロスで岩石封じを当てることで対処していく。スカーフランドロスに岩雪崩の怯みにおびえながらめざパを打つのはもうやめだ。ありもしないめざパに怯え、ガブリアスやメガシンカ前のボーマンダが守ってくる。
エンテイ(プレッシャー)@ラムのみ
陽気201-135-105-x-117-167
聖なる炎 ストーンエッジ 鬼火 守
222ギルガルドシャドーボール、177親子愛ガルーラすてみタックル、216霊ランドダブルダメ地震高乱数耐え(rimo雑記 【ダブル】雨ルンパッパ)。
この構築で最も選出率が低い。しかしながら対リザ系列、ドーブル系列の構築には必ず出していく重要な駒。リザードンは裏から数値や体制で受けると負けるので、上からストーンエッジで処理していく(相手も最速なら同速だが)。リザ系列の構築で対策必須のリザバナに対応するためラムのみを持たせている。一応のドーブル耐性にもなり、モロバレルのキノコのほうしに対して裏から投げる動きも強い。鬼火はキリキザンやクチートの不意打ちを避けつつの弱体化が狙える。
火傷確率で言えば聖なる炎(命中95 火傷率50)よりも高く、ガルーラを火傷させなければならない場面では聖なる炎ではなく鬼火を打つ(しかし外す)。
感想
ガルーラのグロウパンチは強かった。威嚇を食らっても腐らず、一匹で2匹、3匹を処理し劣勢からの逆転も何度もあった。メガフシギバナのような高耐久ポケモンに対して通常の捨て身ガルーラよりも強く立ち回れる。ボルトロスの電磁波、ゲンガーの鬼火、ランドロスの威嚇でグロパンの起点を作ってを積んでいく。
逆に「グロパンを積めない時のガルーラ」は弱かった。捨て身ではなく威力の低い恩返しを採用しているということもあるが、単体攻撃物理ATというのはすぐに威嚇やらゴツメやらで圧力を削がれてしまう。
少々怪しい場面で無理やりグロパンを積みに行く「ヤンキープレイ」が後からすれば正解になることが多々あった。言い換えるならば「相手との立ち回りのかみ合い」に依存してしまっているのだろう。
氷が通りやすいうえに素早さが中途半端なポケモンが多く、凍える風が苦手だった。特にゲンガーのシャドーボールを切っているため、打点が薄くなっているクレセリアの凍風にいいようにやられてしまうこともある(予選ではこごかぜクレセに負けた)。
凡庸なガルーラスタンを使ってみたが、数々の怪しい場面を立ち回りで何とか打開するということが多すぎて「勝ちきる」構築ではないと感じた。
立ち回りで打開するとというと聞こえがいいが、結局相手の立ち回りとのかみ合いに依存しており、安定性がない(不必要な択を生んでいる)。アリーナオフでも同グループになった身内との試合で経験からの一転読みで勝負を決めたり、前日に対戦し構築を知っているプレイヤーだったからこその裏の読み合いを偶然制したり、という怪しい勝ちが散見された。精進したい。
【ダブル】メガバナメガグロス
ギガドレイン/ヘドロ爆弾/眠り粉/守
(メガ後)187-x-166-142-140-125 ずぶとい
ウインディ 威嚇 @ラム
熱風/バークアウト/鬼火/守
197-x-103-121-100-158 おくびょう
マリルリ ちからもち @オボン
じゃれつく/アクアジェット/腹太鼓/守
202-112-101-x-101-75 いじっぱり
サンダー プレッシャー @ゴツメ
10万ボルト/目覚めるパワー氷/羽休め/守
197-x-112-146-110-159 おくびょう
サザンドラ ふゆう @スカーフ
悪波動/竜波動/流星群/大地の力
CS ひかえめ
アイアンヘッド/思念の頭突き/岩雪崩/守
(メガ後)183-169-171-x-131-178 陽気
全国ダブルで使っていた構築。oras初期にトノルンパラグラージが結果を出していたのを見て、その3匹を1匹で封殺するメガバナに魅力を感じた。2シーズン合計100戦くらいしたが、2-1ペースで堅実に駆け上がり、その後レート1800くらいでうだうだ止まってしまうのが気に食わなくて解散した。
バナの横には威嚇を噛ませてバナの場持ちをよくするとともに、草毒打点の通りが悪い鋼への打点を持ったウインディを採用。基本的にはバナウインの威嚇鬼火バークアウトで相手を詰めていく方針に決定。
バナウインの弱点はエスパー、飛行、特殊ドラゴン、高速岩雪崩であり、メガサーナイトメガリザードンY、メガボーマンダ、ファイアロ―、ヒードラン、サザンドラ、ランドロス霊、等への回答を出す必要がある。サザンドラはバナウィンが打点を持てないために処理が遅れ、メガネや球の補正火力で殴られるだけで耐久戦術が崩壊するので、真っ先に対応したい。そこでマリルリを採用。苦手とするランドロス霊やヒードランに対する打点を持てる。
バナ方向に飛んでくる飛行技からの引き先として、サンダーを採用。このポケモンも羽休めによる持久戦術で相手を消耗させていく立ち回りがしやすいと考えた。
ここまでのポケモンが全体的に低速にまとまっているため、ゲンガーやメガボーマンダY,ゲッコウガへの弱さが目立つ。これを解消すべく、スカーフサザンドラを採用。
最後の枠には二枚目のメガシンカとしてメガメタグロスを採用。サーナイトへの回答、特にゴウカザル+サーナイトの並びに対して強いこと、テラキオンを上から縛れること、またメガフシギバナのミラーへの回答にもなることを評価して採用した。
キリキザン抜き+1までsを上げ、残りをbに回した。このポケモンはとにかく場に残ることが必要と考え、威嚇込みでメガガルーラの捨て身を2回耐えられる確率をなるべく上げるため物理耐久に厚く振っている(親と子の乱数を同じとして計算するアランさんのツールの親子愛概算計算で36/256で倒されるくらいなので、まあ死なないと思って動かしている)。
このポケモンは有利対面で打つヘドロ爆弾が最も強い技であるため、基本はヘドロ爆弾を打つ。眠り粉は命中率の関係上なるべく打ちたくないが、相手の交換に合わせて打っていくことで対面を有利にできる技である。バナウインディを見て裏から投げられることの多いアローやヒードランを眠らせることで不利対面を軽減するというのがよくある使い方だろうか。初手でリザードンと対面した際にはメガシンカせずに守り、相手がメガシンカして晴れになった次のターンに葉緑素眠り粉をリザードンに打ちながらメガシンカするという動きを狙いたい。
フシギバナのSを挙げている理由として、キリキザンに上から眠り粉を打てるというのが一つ。もう一つは大抵の水ロトムの上を取ってギガドレインを打つためである。最近水ロトムもキリキザンに上から鬼火を入れるべくSをキザン抜きにしているという話を耳にしたため、キザン抜き抜きになっているが、果たしてどこまで効果があるのかは不明。
守るは追い風トリル等のS操作に対して数値を利用して耐えしのいでいくこのパーティはターン稼ぎの守るが必要であり、また高耐久のフシギバナを2体の連携で落としにかかろうとする相手からの防御に便利だった。
カロスダブルのときは守るを切って光合成が入っているような個体をよく見たが、カロスダブルはファイアローやサーナイト以外に基本的にメガフシギバナに致命傷を与えるポケモンがおらず、また全体的な駒のパワーが低かったために守らなくても済む場面が多かったのだと推測している。対する全国ダブルはカロスよりも一回り耐久と火力が上がったゲームであり、守のないフシギバナに動きにくさを感じ、守ルを採用していても、守+光合成の両方がないと不安が残った。詳しい話は後述の反省点に譲る。
Sを陽気霊獣ランドロス抜きにすることでランドロスのスカーフ判定を行い、余った努力値をbに回しキリキザンの194攻撃+1珠不意打ちを耐えるようにしている。
攻撃技は耐久型ウインディの基本となる4つ。鬼火バクアで相手のアタッカーを腐らせ、バナで詰ませるか、マリルリの太鼓の起点にするかの勝ち筋へと持っていく。
バークアウトはサザンドラやリザードンYといったポケモンがいるときは最優先で打ちたい。
鬼火は物理弱体化だけでなく、クレセリアなどの耐久ポケモンを見たときにも打つ。鬼火とバークアウトをクレセリアに当て続けることで、クレセリアの月の光のPPを枯らし、フシギバナウインディで瞑想クレセに打ち勝つ試合もあった。
ラムのみはモロバレルに対して裏から投げる動きや、対ドーブルで役に立つ。
このポケモンの弱さはsの遅さにある。陽気メガガルーラより遅いために、鬼火を入れる前にどうしてもガルーラの攻撃を一発受けてしまう。鬼火を当てればよいものの、ここで鬼火を外してしまうとメガガルーラの攻撃を鬼火なしで上から2回受ける羽目になる。こうなってしまうとメガガルーラを即処理できないバナウインディの並びは不利になるだろう。特にスカーフ霊獣ランドロス+メガガルーラのような並びではランドの雪崩の怯みを交わしながら鬼火を当てるという動きをするため、分が悪いのである。このためバナウインディで初手で両守るをせずに、眠り粉と鬼火をガルーラ方向に集中することで猫がどちらに飛んできてもガルーラを止めることができるという動きが一応存在する。
鬼火威嚇バクア眠り粉で弱体化させた盤面で腹太鼓を行い、一気に制圧していくという立ち回りを意識して腹太鼓マリルリを採用した。構築全体として火力が高いわけではないために、ジリ貧にならないためにも高火力アタッカーが欲しい。この要請にバナウインディの苦手なランドロスヒードランに強いマリルリがマッチしていた。
太鼓による盤面制圧のために選出するのか、サザンドラをじゃれつき倒すために選出したのか、よくよく考えないと体力が足りなくなる。
サンダー
H全振り、自分のウインディ抜き(=ランドロス抜き+1=ワルビアル抜き)までSを振って、残りbという個体。
飛行技の受け先とともに詰める耐久ポケモンとしてサンダーを採用したが、このサンダーの型を間違えたように感じている。カロスダブルの頃はフシギバナと同様にサンダーも高耐久ポケモンの一角をなしていたが、全国ダブルにおいては周りの耐久火力の工場により羽休めサンダーの耐久性能は一ランク落ちている。サンダーの耐久性能が試合を左右したというのはこの構築を使ってもほとんどなく、結局サザンドラやヒードラン、霊獣ランドロスなどに押し切られてしまうという展開がままあった。今、環境内のサンダーの多くも耐久の詰め筋としての採用というよりは耐久を活かした追い風展開役として採用がメインで、羽休めも詰めというよりはあくまで二回目の追い風を狙う手段としてとらえられていることが多い。この傾向には全国の火力増強環境が背景にあるのではないだろうか。
この系統の構築でサンダーを採用するならば、次はメガネなどで火力を挙げた型で採用したい。
当初は臆病で採用していたが、無振りメガボーマンダを15/16の確率で竜の波動で倒せ、流星群で無振りゲッコウガを倒せる性能に魅力を感じ、控え目に切り替えた。大地の力はヒードランクチートへの技だが、ヒードランに対しては裏の浮いている駒に引くことを警戒して悪の波動を打つのが大半で、最後の最後で引けなくなったヒードランに打つ技だった。眼鏡と違い、スカーフ大地の火力はたかが知れており、なるべくタイプ一致ではない技には拘りたくない。
メガフシギバナはメガボーマンダを苦手としており、この構築に置いてはこのサザンドラとサンダーを如何に消耗させないかがカギになる。
最速かつ222シャドーボール耐えを確保し、サルサナだけでなく、エルフテラキゲンガーにも投げられる。メガメタグロスは速い鋼なのにフェアリー耐性を持っているということが偉い(コバルオンにはできない芸当。実はアイアントというポケモンが速くてフェアリー耐性を持った鋼として存在するが見なかったことにして頂きたい。 張り切り馬鹿力でガルーラを上から処理するという点をみてちょっと強そうに見えても、だ)。
メガバナ構築をXYから使っていて、最大の問題点が対メガサーナイトの処理であると感じた。適当に鋼を採用してもゴウカザル+サーナイトの並びで処理されてしまう。剣舞ニダンギル+マリルリ(チョッキ)のような形をXYでは使うこともあり、これは対サーナイトがそこそこ安定していた。今回はサルとサナの両方の上を取り、処理できるメガメタグロスを採用した。
技はいろいろ試してみたが雪崩ヘッド思念の3ウェポンに落ち着いた。岩雪崩は対メガリザードンYである。ここまでの5匹がメガリザードンに対して薄いため、メガリザが相手にいるときにメガリザに弱いメガグロスが選出できないという事態を回避するための採用。グロスの雪崩の代わりにリザ耐性を持ったサザンドラにストーンエッジを採用するという案もあったが、サザンの大地の力を優先したため、こっちが雪崩を持っている。
反省点
フシギバナとの相性補完こそ良好なものの、炎枠としてのウインディの性能は決して高くはない。先述したSの遅さを解消できるカエンジシを採用しようかと考えたこともあったが、ウインディよりもさらに耐久が低く威嚇がないため、鬼火を外したときの負けへの100m走をつっぱしる感じが嫌だった。バナウインディは持ち前の耐久の高さで眠り粉鬼火の外しを一回程度なら許容できるところにまだ救いがあったが、カエンジシは外し即死亡である。
次にウインディの性能を、近しいポケモンであるエンテイと比較する。
|
||
特性 |
威嚇○ |
プレッシャー△ |
耐久 |
威嚇込みで物理はエンテイより上△ |
威嚇なしだと物理特殊共にウインディより高耐久△ |
素早さ |
メガガルーラを抜けない× |
メガガルーラと同速○ |
炎技 |
普通の炎技のみ△ |
火傷を巻ける聖炎を所持○ |
所持可能なサブ打点 |
||
バークアウト |
撃てる○ |
撃てる○ |
回復 |
あさのひざしによる再生回復○ |
なし× |
エンテイとウインディを比較した際にエンテイの利点として、ガルーラとの同速性能と、ストーンエッジの2つが大きいと考えている。特にストーンエッジはファイアロー、メガリザードンへの即処理打点を持てることが偉く、今回のバナウインディ構築でもファイアロ―やメガリザードンへの処理速度が問題であったため、炎耐性から岩技を打てるエンテイは魅力的ではあった。結局別個に威嚇ポケモンを用意するだけのスペースが捻出できなかったために威嚇+炎を圧縮したウインディを採用したが、ウインディのパワー不足、炎の処理の遅さが目立つ試合もまま見られた。
他に炎打点を持ち、ガルーラより早く、ガルーラに強く、バークアウトみたいな技を打てるポケモンとして「マジカルフレイムムウマージ」というポケモンが存在したが、耐久が信用できない点、炎に対してウインディよりも隙を見せやすい点などがあって、構築の形にすることできなかった。
反省点その2 フシギバナが環境に刺さっていない
当初ラグ入り雨へのイージーウィンを期待して構築を組み始めたが、oras1シーズンでも思ったほど雨とは当たらず、またシーズン2になってから如実にボーマンダリザードンキリキザンテラキオンあたりの数が増加し始めていることをレートに潜っている中で痛感した。特にリザードンボーマンダあたりに対しては苦しい戦いになることが多く、環境に多い構築に明確な回答を出せていないことが嫌になった。
テラキオンに対してはメガフシギバナ、メガメタグロス単品で見ると有利を取れているものの、中低速が多く岩雪崩の怯みに弱い構築であること、そもそも構築内に岩の一貫があることがあって一回怯んだ時のディスアドバンテージが酷く、構築全体としてテラキオンに強いとは言えなくなっている。たとえばガルーラ+テラキオン、サザンドラ+テラキオンのような並びと対面してしまうと怯みにおびえながらマリルリやフシギバナを動かさざるを得ない。
反省点3 結局低速
低速気味のポケモンは上からの被弾回数が増えるため、どうしても怯みや急所といった不確定要素に試合を左右されやすい。さらにこの構築は鬼火と眠り粉という2大信用不可能技を結構な頻度で打っていくために、ストレスのたまる負け方をすることが気になった。一度や二度の技はずしを考慮に入れて高耐久ポケモンのみで構築を構成しているが、それでも外すのはつらい。
反省点4 全国ダブルの火力の増加
カロスダブルから1年たってまだカロスダブルの話をするの今更だが、全国ダブルをやっていて明らかにカロスと比較しての火力耐久面での数値の上昇を感じている。580、600の伝説ポケモンが構築にごろごろ入り、そいつらの周りでハイパーボイスと熱風とすてみタックルが飛び交う環境なのだから当然と言えば当然なのだろうが、火力面の高さに耐久戦術が追い付いていないような実感を受けた。火力の増加の例としてガルーラを挙げよう。ジャパンカップ(カロスダブル)のガルーラの捨て身採用率は25%なのに対し、今のガルーラの捨て身採用率は61%だ。カロスでは恩返しで足りていた火力が、周りの数値上昇のおかげで足りなくなり、捨て身に切り替わるようになっている。
火力に対して火力を合わせる構築の増加は、例えば追い風ガルーラ構築、リザバナ等が代表的だろう。上を取って強力な技を打ち続ける、これこそがダブルの基本である。耐久戦術は火力に対して火力ではなく、相手を弱体化させることで立ち向かう必要があり、この方針自体が破たんしている(火力の増加に対してカロスの感覚で耐久しようとして痛い目を見る)ように感じた。今回のバナ構築、結局弱体化だけでは勝てないと考えて、弱体化に合わせて太鼓マリルリを起動するという方針にしたことは正しかったが、マリルリだけでは火力が足りず、それゆえサンダーを眼鏡にするのがよいと考えている。
他にも可能性ある耐久戦術として瞑想メガヤドランがいるが、低速ゆえに瞑想を積む前にニンフィアのハイパーボイスなどの火力技をを直接被弾してしまうというところが難しい。
最後に
バナのめざ地は単体性能を下げるからと弱いと思ってましたが、バナウインでドランに打点を持てないせいで、裏のサザンマリルリに引かないといけない動きの方が弱かったです。マリルリの数値が足りません。
京大戦ダブル使用構築 「ガルーラギルガルド」
先日11月24日に御縁があって京都大学ポケモンサークルさんとのエキシビションマッチをすることとなりました。
そのエキシビションマッチに私もダブルの代表として出場していました。
シングル×2 ダブル×2 トリプル ローテ マルチ の計7戦にわたる勝負の結果、
4-3で我々の勝利となりました。私自身も無事勝ちを収めることができ、自分のチームに貢献できてよかったと思います。
以下簡単な構築解説
技1 |
技2 |
技3 |
技4 |
持ち物 |
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ふいうち |
けたぐり |
ガルーラナイト |
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みがわり |
キングシールド |
たべのこし |
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こだわりスカーフ |
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だいちのちから |
まもる |
いのちのたま |
|||
じゃれつく |
まもる |
オボンのみ |
|||
めざめるパワー氷 |
でんじは |
まもる |
今回の構築の参考にしたのはリィズさんによる「ゴチルゼル」+「ジュペッタ」構築(http://ryzkousatsu.blog63.fc2.com/blog-entry-396.html)。
「参考」とはいってもメンツは全く異なる。参考にしたのは「ガルーラ入りテンプレート系列に対して安定した勝率をどうやって出すか」という構築のコンセプトである。
この構築では対ガルーラ系列への回答を『たべのこし』ギルガルドを軸にした立ち回りで解決することを模索した。ギルガルドを構築の軸とした理由は、
・ガルーラに対して強い(「かみくだく」を持っていないガルーラは「キングシールド」「みがわり」ギルガルドに対しての打点がないことが多く、かみくだくガルーラの数は少ない)
・ニンフィアに対する安定度(「ハイパーボイス」を半減し、「アイアンヘッド」を持つことでHニンフィアを確定1発にできる)
・クレセリアに対して強く、また冷静ヒードランよりも遅いことで「キングシールド」「みがわり」によりトリルターンを稼ぐことができ、鋼でありながらも「トリックルーム」+「ふんか」戦術に致命的な隙を見せない
などを評価したからだ。たとえば一時期ダブルバトルで流行ったガルーラ ニンフィア クレセリア ヒードラン ボルトロス ランドロスの俗にいうレート民スタンは「ニンフィア」 「クレセリア」 「ガルーラ」の3匹に対してギルガルドで有利をとれる。
次に採用したのはガルーラ。単体性能の高さから広範囲のポケモンに対して1対1交換をとることができると考えての採用。
ギルガルドが苦手なポケモンをガルーラとの1対1交換に持ち込み、ギルガルドで詰めるというのが理想的な立ち回りとなる。「ねこだまし」+「みがわり」の相性の良さからガルーラとギルガルドを初手から並べることもあるが、敵のガルーラの「けたぐり」やランドロスの「ばかぢから」を受けるために表にガルーラ、裏にギルガルドを置くこともある。
半年ほどガルーラを使っていたが、ガルーラを大事に扱う立ち回りが個人的には合わなかったため、ガルーラを雑に扱いつつ活躍させることができる構築は何か、ということを考えこの構築での採用に至った。
ガルーラ+ギルガルドの軸を決定したらあとはこの二匹で対処しにくいポケモンを残りの4匹で解決する。ギルガルドが苦手とするのは弱点である悪、炎、ゴーストの技ではあるが、等倍で通してしまう水、電気も比較的苦手とする。
ここで炎、ゴースト、悪、電気、水耐性を持つサザンドラを採用。霊獣ランドロスに押されて数が減っているとはいえ一定数存在するガブリアスに強く出るために『こだわりスカーフ』を持たせた。これによりメガライボルトに対しても強くなったことが評価できる。
また電気や炎に耐性を持ちながらとヒードラン、リザードン、ファイアローといった炎タイプのポケモンを迅速に処理でき、またクチートにも強いポケモンがほしいと考えガブリアスを採用した。この構築はギルガルド、ガルーラなどの浮いていないポケモンの横に並ぶことが多く、物理型の「じしん」では立ち回りが窮屈になってしまう恐れがあった。そこで今回はガブリアスを「ストーンエッジ」を持った特殊型で採用することでこの問題を解決した。『いのちのたま』を持つことでメガクチートを「だいちのちから」で13/16で一発。ついでではあるが181-120メガガルーラも「だいちのちから」+「りゅうせいぐん」で最低乱数を2連続で引かない限り倒すことができる。特殊型で採用したことにより、{いかく}による威力の下降を受けないことから、ランドロス+ガルーラのような対面にも強い。
ドラゴンを2匹採用することでフェアリー耐性が不安になるが、ニンフィア等を誘ってギルガルドのエサにするということが構築のコンセプトであり、フェアリー耐性の薄さは特に気にならなかった。フェアリーの中でギルガルドで対処しにくいマリルリは後述のボルトロスで倒したい。
マリルリはギルガルドの苦手とするポケモンに全体的にやんわりと強く、ガルーラやサザンドラが削りきれなかったポケモンをアクアジェットで縛っていく場面が多いと踏んで採用した。
最後の枠は常に変動しており、最初はニャオニクスを採用していたが、最終的に採用したのがボルトロスとなった。ボルトロスの採用理由としては「でんじは」によるs操作と、苦手とする水タイプに対する打点の確保がメインである。この構築はモロバレルを比較的苦手としており、モロバレルへの回答を用意する必要があった。当初は「ちょうはつ」入りのボルトロスを採用していたものの、電気技、目覚めるパワー、でんじは、まもるのどの技も切ることができず、苦肉の策として「ちょうはつ」を採用せず『ぼうじんゴーグル』によりモロバレルの「いかりのこな」を無効化することにした。これによりカメックス+モロバレルの「しおふき」+「いかりのこな」構築に対しても一応の回答を用意できる。またメガリザードンY+フシギバナのような高速「ねむりこな」にも強い。
配分としては単純なCSか、「はらだいこ」後に『オボンのみ』を発動したマリルリを一発で倒せるところまで降った後、残りを耐久に回すかどうかで考えた結果CSを選択した。
<ギルガルドについて>
XY始まって以来、ギルガルドというポケモンが理解できなかった。キングシールドによる択の発生が使っても使われても嫌な存在である。カロスダブル末期に登場した『きあいのタスキ』ギルガルドはブレードフォルムで居座ることをある意味正当化させたポケモンであり、ギルガルドヤンキーから一歩抜け出そうとしたインテリではないかとすら思える。
しかし『きあいのタスキ』ギルガルドの欠点として、タスキがつぶれるのが嫌で耐性を生かした裏からの交代で場に出すといったプレイングがしにくくなることがある。
ならば裏から投げることが可能でありつつも、ギルガルドの択の発生を緩和させる型として『ひかりのこな』ギルガルドも存在してもよいのではないだろうか。
ブレードフォルムで居座ることに対し、相手がキングシールドを嫌って攻撃しないことに賭けるという相手依存の要素のみではなく、「『ひかりのこな』により能動的に攻撃をよける」という第二の保険を作ることができる。相手に依存しきる立ち回りは極力避けたいものであり、それゆえギルガルドのキングシールド択は嫌われがちな要素である。
この問題を解決した『ひかりのこな』ギルガルドこそがギルガルドヒエラルキー上位にいると私は考える。
私は『ひかりのこな」ではなく、「みがわり」ギルガルドによる択の回避を選択したが、ギルガルドというポケモンを使って思ったことは相手の2体のうち1体がギルガルドに打点を持てていないときにギルガルドが最も輝くということだった。ギルガルドに打点を持つポケモン2匹がかりでギルガルドに集中して「みがわり」を貫通して倒されるというのが「みがわり」ギルガルドが嫌う戦術であるため、相手がそれをできないような盤面を作るだけでギルガルドは動きやすさが変わる。
最初採用していたニャオニクスの「でんじは」は最終的にはボルトロスが打つようになったが、この技もギルガルドとの相性が良かった。本来ギルガルドが苦手とするポケモンもギルガルドより遅くすることで先手でみがわりを張れ、相手の痺れを待つという立ち回りで辛勝した試合も何度かある。麻痺と「アイアンヘッド」の怯みの相性の良さも言うまでもない。
先述したが、ギルガルドはギルガルドに打点を持ったポケモンが2体並び、しかも全体技で攻撃される(「ねっぷう」、「じしん」、「しおふき」など、「ハイパーボイス」以外のすべての全体技)ことを嫌う。全体技は伝家の宝刀「キングシールド」による択作りすらできないことが苦しい。「ワイドガード」もちの可能性も考慮して全体技を躊躇させているのかもしれないが、気休めにしかならないだろう。
全体技を打つメジャーポケモンである、ランドロス、ガブリアス、リザードン、カメックス等に対して如何に回答を出すのか、がギルガルド構築の肝となるのではないだろうか。この構築ではマリルリ、ガブリアス、ボルトロス、サザンドラの4体がその回答となっている。この4匹とガルーラの単体性能を生かして迅速な処理を行っていく。
<反省点>
反省点としてはリィズさんのゴチルジュペッタとは違い、レート民スタンに対する完全なイージーウィンができないことがあげられる。いくらガルーラニンフィア入りに対して強いとはいえイージーウィンの領域までは行ってない。
直近の代表決定戦でもこの構築のプロトタイプを使ったものの、決勝トーナメントでリィズさんに負けて準優勝になってしまった。結局、構築の完成度でも立ち回りでも、やはりまだリィズさんよりも自分は「弱い」ということを痛感させられた。部内で一番にすらなれないのに、もっと強い相手がいるオフ会や公式大会で勝てるわけもないだろう。私はXYになって初めて明確に「勝ち」を意識してポケモンをやり始めたある意味新参プレイヤーだが、この一年は負けに負け、何回か参加したオフでも一度も決勝Tに出ることはできなかった。リィズさんがゴチルジュペッタを使い3位になったつくオフで、勝ち上がるリィズさんを尻目に予選落ち(しかもリィズさんと同グループになって負けた)をしたあの日はこの一年で最も悔しかった日だ。
そんなうだつの上がらない中で、今回の代表戦で勝てたということは素直にとてもうれしい。何とかこれを契機にしてORAS環境では結果を残していきたいと考えている。
最後になりましたが駒場祭に来てくださった方、そして交流戦で対戦してくださった京大ポケサーの皆様、ありがとうございました。
純トリックルームパーティ【ダブル】
6/5 00:00 初投稿 シャンデラ
6/6 00:30 カクレオン ゴチルゼル ランクルス フレフワン を追加
6/12 クチート を追加
7/8 メガユキノオー メガデンリュウ バンギラス ドサイドン ハリテヤマ ヒードランを追加
ダブルバトルの純トリックルームパーティ(ここでは6匹全員がトリックルーム下で戦うことを想定し、勝ち筋をトリックルームに絞ったパーティを言う)について主要な駒を整理したい。
私はカロスダブルをずっとやっていたので殆どカロスポケモンの紹介になることをご容赦願いたい(一応カロス構築のままでシーズン3ダブルレート1914で終わったので、トリックルームパーティにおいては全国とカロスにそこまでの違いはない(少なくとも1月前まではなかった)と思っている)。
今回①トリックルーム始動要員 ②アタッカー ③その他
の大きく三つに分けて紹介する。
続きを読む回文、分解 ①
「たけやぶやけた」、端的に言って非常にヤバい。
竹藪が焼けているというのはもう危険すぎる。「竹藪」とはなんなのか、そりゃ竹が生えた藪なんだろうが、いったい竹藪とはどんなものなんだろうか、まずイメージを掴みたい。
「竹藪」で画像検索すると、京都嵐山で見るような竹藪小道の画像がどっさり出てくる。この規模が竹藪が燃えているのだとすると尋常じゃない火事だ。
消防車が山ほどやってきて鎮火活動を行うも鎮火せず、延々と燃え広がる山火事。海外の山火事で航空機から放水を行う場面がしばしばみられるが、ああいうことになっているのだ、この竹藪は。もう回文とかどうでもいい、逃げるしかない。
竹藪が焼けることの怖さが徐々に分かってきただろうか。
「しんぶんし!たけやぶやけた!」みたいに回文を言い合っている餓鬼ども(馬鹿だからこの二つしか回文を知らない)は新聞紙とこの大規模山火事を一緒くたにして語っている、馬鹿としか言いようがない。文章を回す前に自分の頭がくるくるパーであることを分かって欲しい。
更に話を進めよう。「たけやぶやけた」竹藪が焼けて「いる」のではなく、竹藪はもう焼け終わっ「た」のだ、なんということだろうか、もう竹藪は焼けつくされてしまったのだ。「たけやぶやけた」、この僅か七文字から、竹藪が焼け、大きな山火事となり、自身が住んでいた家、その思い出、家族、すべてを焼き尽くされ呆然と立ち尽くす心優しいおじいさんの姿がありありと浮かんでくる。
既にお分かりの方が大勢だと思うが、この「たけやぶやけた」おじいさんは、竹取の翁なのだ。
愛娘の様に育てたかぐや姫との出会いの場である竹藪、その竹藪が燃え尽くされてしまった時、この竹取の翁が呟いた言葉、それが「たけやぶやけた」だ。
かぐや姫は月に帰り、彼女の生家は竹藪と共に炭と化した。もう何も残っていない。おばあさんは燃える家の下敷きとなって亡くなった。
「たけやぶやけた」、そこには一切の感情が籠っていない。ただ竹藪が焼けたという事実を叙述したのみである。しかしその裏には耐え難い悲しみと、絶望、言葉では言い尽くしがたい竹藪への思いが詰まっている。
あなたは「たけやぶやけた」、この回文を読んだり口にしたりするときにこの事に思いを至らせたことはあるだろうか。この事実を知ってしまった今、もう「たけやぶやけた」なんて軽々しく口に出すことは出来ないだろう。
竹藪が焼けたその裏にある悲しき物語すら考えられない、そんな人たちはどうせ回文なんて「たけやぶたけた」と「しんぶんし」の2つくらいしか知らないのだろう、ひょっとすると「隣の客はよく柿食う客だ」を回文だと思っていた人もいるのかもしれない、竹藪と柿ってのが何か似てるし。
残念だが、これであなたが知っている回文は「しんぶんし」たった一つになってしまった。女の子に「カッコいい回文教えてよ」と聞かれたときにあなたは恥を忍んで「しんぶんし」と言わないといけないのだ、もう格好良く回文を言って女の子をメロメロにする機会は一生訪れない。
ん、可哀想に。嘘、違和感。
子供は風の子、お前はツチノコ
~ツチノコ研究者「土野 小太郎」先生に学ぶ 明解ツチノコ講座~
ー初めまして。今日はあの幻の生き物、ツチノコについてお話を伺いたいのですが。
土野:ええ、初めまして。ツチノコについて知りたいと。まず、ツチノコってどんな生き物だと思います?
ーどんなと言われましても。ポケモンのノコッチみたいな生き物なんじゃないですか?
土野:あんたそれは逆だよ(笑)。ツチノコっていうのは蛇に似た生き物で、腹の付近がでっぷりと丸まってる変な生き物さ。蛇のように這って動く姿を見た人もいるし、2m以上飛ぶ姿も目撃されたりしてる。面白い話だと自分のしっぽを咥えて、丸くなって転がってる姿が報告されてたりするね。
ー話がてんでバラバラで胡散臭いようにしか聞こえないです。嘘じゃないんですか?
土野:ははは。空気を読まない発言をありがとう。ツチノコはテレビでも面白おかしく取り上げられたりして、完全に「空想上の」生き物だと思われてるね。
「見つけたら賞金100万円」とか言ってどこかの田舎町の町興しに使われたりもしてるようだ。
それでも私はツチノコはいると信じているよ。
ー賞金100万円!。ということはツチノコ研究家の先生はこのツチノコ狩りで生計を立てられたりするのでしょうか。
土野:私はツチノコを捕まえたことが無くてねェ。毎年参加してはいるけど駄目駄目だね。
ーなるほど。先生はこれまでツチノコを一匹たりとも捕まえたことが無いのに、「ツチノコ研究者」を名乗っていらっしゃるのですね。いやはや尊敬いたします。
土野:宇宙について研究してる人の一体何人が宇宙に行ったと思うかね。ツチノコを捕まえたことがないツチノコ研究者がいても何もおかしくはないさ。
私は捕まえたことが無いけど、ツチノコを見たことはあるよ。小学生の頃、川で遊んでいたら目の前にでっかいツチノコが現れてね。その目に魅入られて動けなかったのさ。捕まえたかったけどね。
ーどうせ蛇か何かを見間違えたんでしょう。小学生の記憶なんてあてになりませんよ。私だってくじらの形した雲に乗った思い出があるくらいですから。
土野:教科書の文章に影響されるなんて随分純真な小学生じゃあないか。今では見る影もないかな。
ー私の小学生の話はどうでもいいです。ツチノコの話をしましょう。いざツチノコにあった場合、どうすればいいのでしょうか。捕獲してみたいのですが。
土野:ツチノコは臆病だからね。気づかれないように近づくか、気づかれたとしても逃げられる前にお腹をつかめばいいんじゃないか。
ーなるほど。
土野:ところでだ。私の「土野 小太郎」という名前は余りに安直すぎると思いやしないか? ツチノコ研究家だから「土野 小太郎」。昭和の漫画ギャグ漫画レベルの酷さだ。創作の人物名を思いつかない作者が良くやる卑怯な手だよ。
ーよく話がつかめないのですが。創作? どういうことですか?
土野:君はどこまで間抜けなんだ。君も私も適当に作られた創作上の人物じゃないか。私はまだ名前があるからマシさ。君なんて名前すらないだろう。名無しのインタビュアーさ。
ー創作なんかじゃなく、私は確かに、あれ?私の名前は?性別は?
土野:君も私も所詮は想像上の人物だ。考えてみたまえ。私たちとツチノコは何が違うのか。何も違いなんてありゃしないじゃないか。私が「人間」で居られるのは私が人の言葉をしゃべり、人の名前を持っていることを「表現され」他者に認識されているからだ。
ツチノコだってそうさ。そこら辺の蛇を「ツチノコ」だと思ってくれる他者がいて初めて存在できる。ツチノコという文脈が存在し、それが世界に投影されることでそこらの蛇は蛇じゃなくツチノコになれるのさ。
むしろ君はツチノコより酷いんじゃないか。名前どころか何もない。あるのはそのひねくれた性格だけ。
ところが私は名前があり、姿がある。否、姿はまだないか。ならここで作ってしまおう。
私はツチノコの様にでっぷりと太った腹をした初老の男。今、蛇の彫刻が彫られた高そうな椅子に座って君のインタビューを受けてる。ここは私の家だ。
これで私の存在は担保された。
今は君も人の言葉をしゃべるから辛うじて人だと認識されているが、君が黙った瞬間、君はこの世から消えてしまうだろう。嗚呼可哀想に。
可哀想だから君も存在させてあげよう。
ーありがとうございます。
土野:君はツチノコだ。そう、喋るツチノコ。君は人間じゃなかったのさ。
君は勝手に我が家に窓から入ってきて私に質問したんだ。「ツチノコって何なのか」と。
ツチノコ:そんな気がしてきました。
土野:うむ。君はツチノコだ。それではツチノコ研究家、土野小太郎、人生で初めてツチノコを捕獲するとしよう。
ツチノコ: え。
逃げようと思ったが私には腕も足もなく、あるのは唯うねうね動く胴体のみ。全く前に進めずジタバタし続けるだけだ。
土野はとても初老とは思えない敏捷な動きで私のお腹をつかみ、そのまま籠に入れてしまった。 もう逃げ出せない。
土野:今日はツチノコ鍋かな。100万円の鍋を一度食ってみたかったんだ。
ツチノコはエビに似たダシが出るらしい。鍋で煮られている最中に、そういう話を聞いた。