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imterlawの日記

郊外にぽつんと立った豪華な屋敷

子供は風の子、お前はツチノコ

~ツチノコ研究者「土野 小太郎」先生に学ぶ 明解ツチノコ講座~

 

ー初めまして。今日はあの幻の生き物、ツチノコについてお話を伺いたいのですが。

 

土野:ええ、初めまして。ツチノコについて知りたいと。まず、ツチノコってどんな生き物だと思います?

 

ーどんなと言われましても。ポケモンノコッチみたいな生き物なんじゃないですか?

 

土野:あんたそれは逆だよ(笑)。ツチノコっていうのは蛇に似た生き物で、腹の付近がでっぷりと丸まってる変な生き物さ。蛇のように這って動く姿を見た人もいるし、2m以上飛ぶ姿も目撃されたりしてる。面白い話だと自分のしっぽを咥えて、丸くなって転がってる姿が報告されてたりするね。

 

ー話がてんでバラバラで胡散臭いようにしか聞こえないです。嘘じゃないんですか?

 

土野:ははは。空気を読まない発言をありがとう。ツチノコはテレビでも面白おかしく取り上げられたりして、完全に「空想上の」生き物だと思われてるね。

「見つけたら賞金100万円」とか言ってどこかの田舎町の町興しに使われたりもしてるようだ。

それでも私はツチノコはいると信じているよ。

 

ー賞金100万円!。ということはツチノコ研究家の先生はこのツチノコ狩りで生計を立てられたりするのでしょうか。

 

土野:私はツチノコを捕まえたことが無くてねェ。毎年参加してはいるけど駄目駄目だね。

 

ーなるほど。先生はこれまでツチノコを一匹たりとも捕まえたことが無いのに、「ツチノコ研究者」を名乗っていらっしゃるのですね。いやはや尊敬いたします。

 

土野:宇宙について研究してる人の一体何人が宇宙に行ったと思うかね。ツチノコを捕まえたことがないツチノコ研究者がいても何もおかしくはないさ。

私は捕まえたことが無いけど、ツチノコを見たことはあるよ。小学生の頃、川で遊んでいたら目の前にでっかいツチノコが現れてね。その目に魅入られて動けなかったのさ。捕まえたかったけどね。

 

ーどうせ蛇か何かを見間違えたんでしょう。小学生の記憶なんてあてになりませんよ。私だってくじらの形した雲に乗った思い出があるくらいですから。

 

土野:教科書の文章に影響されるなんて随分純真な小学生じゃあないか。今では見る影もないかな。

 

ー私の小学生の話はどうでもいいです。ツチノコの話をしましょう。いざツチノコにあった場合、どうすればいいのでしょうか。捕獲してみたいのですが。

 

土野:ツチノコは臆病だからね。気づかれないように近づくか、気づかれたとしても逃げられる前にお腹をつかめばいいんじゃないか。

 

ーなるほど。

 

土野:ところでだ。私の「土野 小太郎」という名前は余りに安直すぎると思いやしないか? ツチノコ研究家だから「土野 小太郎」。昭和の漫画ギャグ漫画レベルの酷さだ。創作の人物名を思いつかない作者が良くやる卑怯な手だよ。

 

 

ーよく話がつかめないのですが。創作? どういうことですか?

 

土野:君はどこまで間抜けなんだ。君も私も適当に作られた創作上の人物じゃないか。私はまだ名前があるからマシさ。君なんて名前すらないだろう。名無しのインタビュアーさ。

 

ー創作なんかじゃなく、私は確かに、あれ?私の名前は?性別は?

 

土野:君も私も所詮は想像上の人物だ。考えてみたまえ。私たちとツチノコは何が違うのか。何も違いなんてありゃしないじゃないか。私が「人間」で居られるのは私が人の言葉をしゃべり、人の名前を持っていることを「表現され」他者に認識されているからだ。

ツチノコだってそうさ。そこら辺の蛇を「ツチノコ」だと思ってくれる他者がいて初めて存在できる。ツチノコという文脈が存在し、それが世界に投影されることでそこらの蛇は蛇じゃなくツチノコになれるのさ。

むしろ君はツチノコより酷いんじゃないか。名前どころか何もない。あるのはそのひねくれた性格だけ。

ところが私は名前があり、姿がある。否、姿はまだないか。ならここで作ってしまおう。

私はツチノコの様にでっぷりと太った腹をした初老の男。今、蛇の彫刻が彫られた高そうな椅子に座って君のインタビューを受けてる。ここは私の家だ。

これで私の存在は担保された。

今は君も人の言葉をしゃべるから辛うじて人だと認識されているが、君が黙った瞬間、君はこの世から消えてしまうだろう。嗚呼可哀想に。

可哀想だから君も存在させてあげよう。

 

ーありがとうございます。

 

土野:君はツチノコだ。そう、喋るツチノコ。君は人間じゃなかったのさ。

君は勝手に我が家に窓から入ってきて私に質問したんだ。「ツチノコって何なのか」と。

 

ツチノコ:そんな気がしてきました。

 

土野:うむ。君はツチノコだ。それではツチノコ研究家、土野小太郎、人生で初めてツチノコを捕獲するとしよう。

 

ツチノコ: え。

 

逃げようと思ったが私には腕も足もなく、あるのは唯うねうね動く胴体のみ。全く前に進めずジタバタし続けるだけだ。

土野はとても初老とは思えない敏捷な動きで私のお腹をつかみ、そのまま籠に入れてしまった。 もう逃げ出せない。

 

土野:今日はツチノコ鍋かな。100万円の鍋を一度食ってみたかったんだ。

 

ツチノコはエビに似たダシが出るらしい。鍋で煮られている最中に、そういう話を聞いた。