【レビュー】最高ゲーム、「ウィッチャー3 ワイルドハント」をクリアして。
PS4を買う日、一緒に買うソフトを何にしようか迷う中で、ネットで見た「剣と魔法のRPG」という情報につられて買ったのが、この「witcher3 wild hunt」だった。
北欧のファンタジー小説をもとにしたゲームの三作目ということで、過去作をやっていないと話が分からないのではないかと不安だったが、杞憂だった。必要な説明はゲーム中の人物事典を読めばわかるし、その場の雰囲気で大体関係性は理解できた。
10/4に買って、この前やっとストーリーをクリアした。大体クリアまで80時間くらいはやったと思う。
とんでもなく面白い、傑作RPGだった。バケモンだ。
舞台となるのは化け物が蠢く中世のような世界。
主人公、リヴィアのゲラルトは、特別な試練を乗り越え、異形の者と戦う情人離れした能力を手にした<モンスタースレイヤー>である「ウィッチャー」と呼ばれる存在で、モンスター狩りによって日銭を稼ぎながら世界各地を回り、自分の娘のような存在であるシリを探している。シリは特別な血筋を背負っていて敵から追われていて……、というストーリー。渋いおっさん(白髪は年齢のためではなく、ウィッチャーになるための試練の代償らしい)、のゲラルトがまず格好いい。化け物を殺すための銀の剣、人を殺すための鋼の剣の2本の剣を背中に差しているってところから痺れる。
化け物退治の専門家であるため当然のようにモンスターに詳しく、グリフィンの巣をみて、グリフィンについての知識をペラペラ語りだす(独り言だからちょっとシュール)所から敵にビビるだけの雑魚とは違う。老獪、何事にも動じず、冷静に対処する姿が格好いい。日本語の吹き替え音声も格好いい。このゲーム、翻訳フルボイスになっていてすごい。主要キャラから村人まで、全員しゃべる。ゲームの中での異国の民は音声が翻訳されず、字幕のみになるところとかも芸が細かい。
- 世界がよくできてる
私はps3を買わず、ps2から一気にps4へと世代交代したが、グラフィックがめちゃくちゃ綺麗。そしてオープンワールドは広い。オープンワールドとはいっても世界が一つにつながっているわけではなく、ある程度広い箱庭が数個あるという感じだが、それでも広い。馬で走って端から端まで20分以上はかかる。
どでかい街、「ノヴィグラド」に初めて行ったときには特に感動した。
これぞRPGの街だと言わんばかりの街全体の佇まい、家々が密集してひしめき合う猥雑さ、貴族たちが住む豪邸と物乞いがいるスラムが一つの街に共存しているという街の作り、そしてモンスターがひしめく下水道、すべてが素晴らしい。
フィールドの状態が常に変化し、昼夜の概念だけではなく、雨、雪、嵐といった天候の概念が存在するのもよい。嵐が吹くと木々が風邪でたわみ、葉っぱが揺れて音を立て、湖や海の波が激しくなる。小舟で海を渡っている時に嵐に当たると船が大きく揺れる(さすがに嵐で船がバラバラになることはないみたい?)。
魔女が住む沼地、グリフィンが潜む孤島、巨人の住む雪山、エルフの地下遺跡、「ファンタジーにあってほしい」ありとあらゆるフィールドが詰め込まれて世界への没入感を高めてくれる。
▲ 上でも触れたウィッチャー3最大の町ノヴィグラド
見渡す限りすべてが街であり、歩いているだけで楽しい。この街全体の面積を合わせても、もこの街があるフィールド全体の1/10以下にすぎない
▲ ノヴィグラドの港 水の表現がきれいなのにも驚いた
▲ 中盤以降行くことになる「スケリッジ諸島」
諸島だけあって海を船で渡ることになる。見えにくいが写真奥に見える灯台のある半島のさらに奥に巨大な島がある。
またここでゲラルトがいるのは一番でかい本島であり、そのさらに向こうにも別の島がある。デカい
- 一筋縄ではいかない人間模様
このゲーム、モンスタースレイヤーとして目の前の敵をバサバサ叩ききる勧善懲悪ものかと思いきやそうではない。
ある人を助けたら実はその人は盗賊で、別の土地で略奪惨殺をしていると頃に出くわしたり、子供を助けたらそれが原因となりまわりまわって別の人が自殺していたりと、「善人っぽい」選択肢が裏目に出ることも多い。
「本当の怪物は人間だった」というわけではないが、略奪暴行何でもありの世界で、無力な村人は重税に苦しみ、盗賊の略奪に苦しみ、更にモンスターにも襲われる。ウィッチャーである主人公はそんな世界の中で、変異体であることへの偏見、モンスターを殺して日銭を稼ぐというある種人の弱みに付け込む職業であることへの妬み恨みを受け、時には街を歩いているだけで公然と暴言を吐かれる。
そういう暗い雰囲気の漂う世界観が、美しい自然風景の中で描かれることが素晴らしい。
▲ ウィッチャーの隠れ家 ケィア・モルヘン
他のウィッチャー達と会うと普段とは違う、くだけた姿のゲラルトが見られて楽しい
このゲームは会話も楽しい。
- サブクエストの豊富さ(ネタバレあり)
このゲームメインストーリーよりもサブクエストにかけた時間の方が多いほどにはサブクエストが多い。具体的にはクリア時点で110個のサブクエストをクリアした。
サブクエストとはいえメインストーリーと同様のボリュームがある。
基本的には村々(めっちゃ多い)の掲示板を見ると依頼が張ってあり、それを見て依頼者の元を訪ねるor歩いているとその場で人が依頼をしてくるという形だが、依頼も単なるモンスター殺しで終わるようなものではない。
例えば、交易路を通る荷馬車を襲う化け物を殺してくれという依頼では、まずワイバーンの襲撃にあった荷馬車の痕跡を調べるというところから始まる。ウィッチャーは人間離れした感覚を持っているという設定があり、それを用いて被害にあった血痕、死体、落ちている羽といったものを発見し、それらをもとにモンスターの棲家、居場所を特定するところから始まる。このゲームではなるべくお使いイベントをお使いにしないように、という配慮がなされているのではないかと感じた。
サブクエ自体にもいくつかのルートがあるものもある。
依頼を見て訪れることになる、人を殺すモンスターを「森の精霊」と崇める村では、
モンスターが人を殺すのは森の怒りだと主張し、村の昔ながらの風習を守り儀式を行うべきと主張する老人たちと、村人を殺す化け物は精霊などではなく、殺すべきだと主張する若者、どちらを手伝うかを決めることができる。
老人を助けるルートでは、森の精霊にオオカミの心臓を捧げることで、儀式が完了し、「村人を襲う化け物を退治することなく」依頼が完了する。「こんな儀式を行っても今後も人が死ぬ」というウィッチャーの忠告にも、「村には村の伝統がある」として拒絶、そのままウィッチャーは村を去る。そのあとは描かれない。
逆に若者を助け、化け物を退治するルートでは紆余曲折を経て、「森の精霊」と呼ばれるボスを倒すのだが、依頼を報告するために村に帰ると、若者たちが「化け物を精霊とあがめる老人は村の癌だ」と主張し、村の長老たちを殺し終えているという所に遭遇する。結局「森の精霊が殺した村人よりも多くの人を殺した若者」から森の精霊を始末した報酬を得て、村を去る。
一つのサブクエにその村の人間模様が描かれるようなものがかなり多く、メインクエを進める前に街のサブクエを片っ端から潰していくプロセスが楽しかった。サブクエの結果で一部のメインキャラの生死が決まり、メインストーリーにも影響するというのが素晴らしい。
他にも他のウィッチャーの剣や鎧の設計図を探す、トレジャーハンター系のクエストでは
「なぜその設計図を持ったウィッチャーがそこで死んでしまったのか」というメインストーリーに一切関わらない設定をこれでもかと出してくる。錬金術師に騙され、捉えられたウィッチャーの死ぬまでの痕跡を追っていくうちに設計図が手に入る(錬金術師の顛末も語られる)。
▲ 「森の精霊」クエスト 化け物を退治するのに、その化け物に対するバックグラウンドがあるのがいい。モンスターの弱点のみではなく、フレーバーテキストを大量に乗せたモンスター図鑑を読むとさらに世界観への理解が深まる。
結局このゲームは、モンスタースレイヤー「ゲラルト」として成りきるロールプレイをするのが楽しいのだと感じた。練りこまれた設定、豊富なサブクエスト、広い世界、すべてがゲームへの没入感を高めてくれる。
「いいゲームはバッドエンドの描き方がいい」という俺が主張する定理があるが、このゲームはバッドエンドがいい。ネタバレするわけにもいかないので触れないが、素晴らしいバッドエンドだった、見る価値のあるバッドエンドだったとだけは付け加えておく。
先日発表されたGame of the year でもウィッチャーが多くの賞を取っているが、これもうなずける。特にベストゲーミングモーメントではウィッチャーのメインストーリーの一つ、血まみれ男爵関連のストーリーが1位を取っている。
この血まみれ男爵関連のストーリーは素晴らしかった。「選ばなかった選択肢が気になりすぎて」選択肢を変えてその場で2週してしまった。何を言ってもネタバレになるのでこれについても何も言えないが、これこそがウィッチャー3だと思う。ドラクエ7のグリンフレークの昼ドラ物語を想起させるようなドロドロした人間関係に、あれとは違いモンスターが絡み、そして最後は……、「正しい選択なんてない」というウィッチャー3のすべてに通底するテーマをぶつけてくる最初の山場であると思う。
悪かった点もいくつかある。オープンワールドの宿命とはいえ、ロードが長い。一旦死ぬと再び始めるためには30秒以上のロードが入る。そしてちょっとショートカットしてやろうと高い所から飛び降りると大抵死ぬ。そして長いロードが入る。勘弁してほしかった。
また何回かフリーズした。これも読み込みの多さとトレードオフなんだろうが、PS4にもなってフリーズしてソフトが落ちるのかと結構がっかりした。一方でこのゲームはオートセーブが優れていて(数分おきにセーブが入ってセーブタイミングも任意で変えられる)ため、FFとかやっていてよく起きる「セーブせずにガンガン進んでたら死んでめちゃくちゃ巻き戻される」というのは一切なかった。だからフリーズしても大きく巻き戻ることはなかったのでよかった(そもそもフリーズするなという話だが)
また最初の時点でできることが多すぎて何すればいいのかわからない。ヒットアンドアウェイで逃げて、魔法で防御して、カウンターを入れてという戦闘システムだが、なかなか操作に慣れにくい。錬金術で戦闘用アイテムを調合するのもチュートリアルが入るが、錬金で作られるアイテムの有用性になかなか気付けず、私がまともに使うようになったのは中盤以降だった。
と、悪い所を挙げれば結構あるが、それを有り余る良さが目立ちまくり、「今までやった中でも1,2を争ういいRPGゲーム」で、中世ファンタジー世界が好きならば買って
損はないおすすめゲームだと思う。PS4を買って最初にやるゲームがこれでよかったと私は感じた。ゲームの楽しさを真正面からぶつけてくる、そんなゲームだった。
まだこのゲームは終わりではなく、10時間遊べる既存フィールドでのシナリオを描くDLC(この前配信された)、20時間遊べる完全新規フィールドでのゲラルトの冒険を描くDLC(来年配信)の2大大型DLCが残っているため、まだウィッチャーで遊べるのがうれしい。銀の剣と鋼の剣を携えて、再びあの世界へと舞い戻ろうと思う。