imterlawの日記

郊外にぽつんと立った豪華な屋敷

CHAOS;CHILD 感想② (個別√感想)【ネタバレ】

前回の記事から気づけば半年も立ってて、今更感想を書くのはどうなのかと思ったが、書かないと申し訳ないので更新する。

 ネタバレしかないので注意。

 

 

 

 

①有村√

有村雛絵はLCCでも後日譚小説(Children's revive)でもおいしいところを持っていく

優遇されたキャラクターだなと感じていたが、この個別ルートでの不遇さの反動だと思えば仕方ないような気もする。

「当事者になりたい」という強い意識を持っていた拓留と比較して、有村は「真実を知りたい」という思いを常に根底に持ち続けたキャラだ。ギガロマニアクスとしての能力も他人の言葉が嘘か本当かわかるという能力で、多分この能力のせいでいろいろ本編が書きにくかった点もあるだろう。

特に共通1週目ルートで真犯人探しのパートではかなりこのキャラの扱いに気をつけないと一瞬で彼女の能力で犯人がわかってしまう。結局は「催眠で嘘を事実と自分に信じ込ませる」という手法で切り抜けたが、結構無茶苦茶なことしているとプレイから数ヶ月経った今振り返って思う。

有村ルートは話の流れとしてはよくできているルートだった。「あたかも」ギャルゲーかのように進んでいく中で、有村の周りに起きていく事件を機に日常が破断し、最後は「アレ」、あのエンディングで終わる。

拓留と有村のすれ違いが、「拓留が有村のことを信じきれなかった」というところから起きてしまうというのがうまい演出だと思う。「彼だけは嘘をつかない」と信じてた拓留が嘘をついた、ここに対して有村が拒否反応を起こす。

最後真犯人から有村を庇い死んだ拓留の亡骸を抱え、一人妄想の世界に逃げ込むというエンディングに、最初のギャルゲー展開から到達するなんてのはさすがに想定外だったが、見方を変えれば彼女は妄想の中で彼女にだけしか見えないものではありながらも「真実」を手に入れたんだと言えなくもない。嘘を許せない、真実を追い求めた彼女が自ら虚構に入り込むというのは綺麗なオチだろう、いや、物語の展開としては最悪のBADENDだが。

 

雛絵ルートと華ルートは比較的早めに共通ルートから分岐するために、カオチャの本筋の話と絡んでこない、ある意味で独立したルートになっている。そこに物足りなさを感じたという点は否めない。

 

 

②華√

無茶苦茶すぎる。メインライターが要求された巨大力士シール登場の展開を作れなかったために、サブライターに展開を丸投げしたというのをファミ通のインタビューでみたが、さすがに要求が無茶すぎただろう。

華が喋らない理由、「自分の言葉をきっかけに、他人の妄想がハウリングを起こし意図しない形で妄想が現実に顕現する」という彼女のギガロマニアクスとしての能力を契機として、渋谷の街が大混乱に陥る。

このルートの特徴としては、黒幕、和久井が姿をあらわすことだろうか。明らかに怪しいのに共通1週目では何も出てこなかった和久井が実は委員会の人間でしたというのは読めてる展開ではあったが、結構驚いた。

ギガロマニアクスとしての歴然とした力の差に、追い詰められる華と拓留、最後の望みをかけて華が「超強い力士シール」と叫ぶと、それが偶然発言、最強の巨大力士シールvs和久井の戦いになる、という展開はB級映画そのものだ。

本編との関連性が薄い上に、漂うB級臭からそんなに評判はよくなさそうなルートだが、私個人的にはエンディングの終わり方がいい。

最後力士シールの力でなんとか和久井を倒すことができたものの、この事件をきっかけに二人は完全に委員会の敵とみなされ、平穏な高校生活を送ることは2度とない、「世界を敵に回した」逃亡者としての生活を強いられることとなる。

こういう「目の前の悪はとりあえず倒すことができたものの、状況は最悪、お先真っ暗、俺たちの戦いはこれからだ」みたいなエンディングが大好き。Sirenで好きなエンディングもsiren2の永井end、ルート上のラスボスを倒したものの、現実世界に帰れず異形に支配された平行世界へと落とされ、先のない戦いを強いられるアレ、あれが一番好き。

話をもどすと、私自身もルートとしての展開は正直好みではなかったけど、このエンディングの余韻が好きなので華ルートの評価はかなり高い。

 

 ③うき

個別ルートなのに二つに分岐するルート。非実在青少女から分岐するという点でもう一切の救いがなさそうだがその通り救いがない。

うきが拓留に切られたという事実を拓留から隠すために、拓留を妄想の救いに閉じ込めるというやるせないルートで、プレイヤーとしてはありえない明るい世界が展開される中で常に「どんでん返しがどのように来るのか」を警戒しながらプレイさせられた。

ストーリー自体はもう「うきの献身」というただそれだけを描いたルートで、そこにどこまで感情移入できるかに尽きると思う。私はあまりできなかったが、分岐するルートのひとつである、another skyエンドが好きだ。

最後にうきが死ぬか植物人間として生存するかの分岐で、こちらはうきが死ぬ方のエンドだ。拓留が妄想の世界から脱出したのちすべての真相を語り、うきを殺したのは自分だと自首するも、うきには傷が付いておらず拓留の裂傷が死因ではないと言われる。

「妄想から脱出したはずなのに、未だに「拓留にとって都合のいい世界」が続いている、妄想から脱出したということ自体が妄想なのではないか」という胡蝶の夢エンドで、うきの影が見えて終わり。

結果として本当に妄想から覚めたのかということがあやふやなまま終わるという余韻が非常にいい。個別ルートで一番好きなルート。

 

 

④乃々√

「隠していることがある」、「明らかに胡散臭い能力の説明」という共通ルートで貼られた乃々に関する伏線が回収される。

乃々の正体は震災で死んだとされた南沢千里で、乃々の能力が擬態であった。震災時に死んだ乃々になりかわる形で「来栖乃々」となった南沢は、そのあともボロを出すことなく、「明るく誰にでも好かれる来栖」というキャラクターを演じきっていた。

このルート、どんでん返し自体は非常に驚かされるものの、「家族の中で隠し事はしない」ということに対して強い拘りを見せる拓留が結局「姿は違っても乃々は乃々

なんだ」という納得に落ち着くんだろうということは見え見えで、確かにそういう展開に落ち着いて一安心といったところか。

意地の悪いカオスチャイルドにしては「救いのある」ルートになっていたのが特徴だろう。このルートを正史ととっても悪くはないくらいには。

気にくわないのがルート上での一部キャラの扱いで、具体的には川原くんと尾上世莉架。

川原くん、クズのように見えて共通ルートの文化祭前でまともなキャラのような描き方をしてたが、このルートではただのクズで失望。LCCでも川原くんはクズのままだったので、「文化祭の時にちょっといいキャラに描いた」というところの方がミスなのではないかという気がした。救いようのないクズキャラで、流石に邪魔。乃々にひっついて出てくるせいで乃々周りの話の評価を下げざるをえない。

もう一人、尾上世莉架に関しては完全にあてつけ、負けヒロインとして描かれている。「拓留のやりたいこと」のために生まれたはずが、「拓留の隣にいるのは自分でなければ嫌だ」という思考に変わっている説明がないのもなんともという感じだし、やってることもまぁ負けヒロインのヒールがやることそのまま。「人当たりのいい表の姿と対照的な裏の姿」という両極端な2面性を持つ尾上が結局矮小化されてしまってるのがうーん。

 

 

まとめ:

どのルートも結局trueを支える土台にすぎないから個別ルートの意義みたいなものが薄いというのがこういうアドベンチャーゲームとしてどうなんだという気はするが、trueが最高だからどうでもいい。

 

LCCと後日譚小説も読んだが、LCCは所詮はファンディスクといった程度のものだったのに対して、メインライターが書いた後日譚小説は完璧だった。カオチャをプレイしたなら絶対に買うべき。