imterlawの日記

郊外にぽつんと立った豪華な屋敷

感想:EDH/書評:メディア論の名著30

EDH

mtg.bigmagic.net

MTG(マジックザギャザリング)の4人対戦特殊フォーマットのEDHにハマってる。

コロナの中でむしろ紙のカードゲームにハマる逆張り人間になってしまった。

仲間内で毎週リモートEDH卓を立てて対戦して半年以上経ったが、全然飽きない。

元々のMTGのルールの面白さに加え

 

・4人対戦になったことで不確実要素が増えて毎試合試合展開が異なることの面白さ

・「ジェネラル」という軸となるカードを変えてデッキを組み直す面白さ

・対面のジェネラルが変わると試合展開がガラリと変わる面白さ

・ハイパワーカードを叩きつける面白さ

 

 

などなど、よく言われているEDHの面白さは一通り体験して、どれも真実だと思う。

全く飽きないし、結構な額かけてデッキ揃えてるけどまだカード買いたく/ゲームやりたくなってくる中毒性がある。

 

4人対戦のパーティーゲーの要素がカラリとした明るいゲームっぽさを纏いつつ

対面を縛る強烈なロックや、通すと即死するコンボを構えながらじりじりと進むターン展開、対面3人の妨害を乗り越えながら勝利を持ってくるための試合運びなど、ゲームの巧拙が出るマジの技術介入要素があり、デッキパワー揃えてやると毎試合スリリングでめちゃくちゃ面白い。

よく言われてるが、身内意外でやった時にデッキパワーが歪になってしまうと試合そのものが壊れかねないのが悩み。これはどのパーティゲームでもそうだろう。初心者が混じったカタンは悲惨だ。

 

身内でやってるから楽しいのか、そもそもこのゲームが楽しいのかもよくわからないが、とはいえカードを毎週遊べる仲間さえいれば無茶苦茶おもしろいゲームだなぁと思う。

 

メディア論の名著30

www.chikumashobo.co.jp

 

メディア論に一ミリくらいしか興味がない人間が読んでも面白いという、謎の稀有なメディア論紹介本。最近読んだ本で一番面白かった。

 

メディア論研究者の作者がお勧めする、メディア論の名著を時代的背景とともに30個紹介する、という構成。

もちろん現役のメディア論研究者の作者が紹介する本なのだから、マクルーハンハーバーマスなどの有名研究者の本も多い(メディア論に興味のない俺でも知ってるのがこのライン)が、「この本は読みづらい」であったり、「文学っぽすぎる」、「好きか嫌いかで言ったら嫌いな本」というようなかなり鮮烈な批判を述べつつ名著だとして紹介するその態度がかなり面白い。

 

作者自身がどのタイミングで紹介する本に触れたか、という自伝的な紹介から本の紹介に移るが、「読んでないタイミングで留学生から感想求められて急いで読んだ」とか「日本語訳するときの翻訳者と研究者としての交流が深かった」とか「大学時代のゼミで読んだ」、「この本を書くために読んだ」とか多種多様な研究エピソードとともに語られるのが面白く、この作者自身が研究者として歩んできた営みみたいなものを追体験する体裁にもなってるのがよくできてる。

 

人文学研究者ならではの振る舞いというのか、メタ/シニカルな目線で紹介する本を読み、さらにはその名著を紹介する自身の本すらもその対象にしているのが、読んでいて一番面白いところだと思う。

 

エンウェンスペルガーの「意識産業」という本の紹介の中で、読まれもしない旅行ガイド、ポケット教養書に代表される「消費財としての教養」についての言及を行うが、エンウェンスペルガー自身も「意識産業」が「消費財になる」ことに自覚的であっただろうと推察するとともに、自身が書いている「メディア論の名著30」もまたその一つだという自己言及するところが面白い。

大衆にばら撒かれ、読まれないままに打ち捨てられるようなポケット学術書(=新書)であったとしても、少数の真に読んでくれる人の手元に届くという功利があるなら別によくねという立場を踏襲し、それでいいじゃんと言い除けてしまう開き直りが好き。

 

「ウェルズの宇宙戦争のラジオドラマを信じた人々がパニックになった」というメディアについてよく例示される話は有名だが、この話が実は昨今検証されてデマの可能性が高いということがこの本を読んで一番衝撃だった。

このエピソードをデマを広めた書籍(キャントリル『火星からの侵入』)を名著に入れた上で、著者自身がこの寓話を信じており、自身の書籍で言及していたことに対して自己批判しながら語るというのもいかにもメディア論研究者っぽいひねくれ方だった。

フェイクニュース」に対する人々への反応を語る論文が、それすらフェイクだったという構造がめちゃくちゃ面白い。

 

心底どうでもいいことだが私はメディア論の本では、「グーテンベルグの銀河系」というワードセンスだけでマクルーハンが好き。